ポジティブ十割蕎麦

昨晩の記事の最終行で自分に注文した「パうどん」を食べようとしたが、なかなか箸が進まなかった。検索すると「パうどん」の製造元は北海道にあるらしい。何となく従業員全員があらゆる言葉を訊き返していそうな先入観を持ってしまう。

箸が進まなかったのは、どうしても「追い鰹」に似た「追いポジ」を思いつかなかったから。悲しい気持ちになって、スティーヴィー・ワンダーを聴きながら、ぼんやりと空想を追っていた。 写真の奥にいるのは、シンセサイザーの発明者レイ・カーツワイル。彼は視覚障碍者向けに文書読み上げ装置を開発したことでも知られている。

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(Historic photo of Ray Kurzweil with Stevie Wonder playing a Kurzweil 250 synthesizer in 1985. (credit: Kurzweil Technologies))

こういうときは焦ってもだめだ。ビジョナリー泉田は、誰よりも産業構造の近未来を知っているので、彼の著作をもう一度復習してみよう。

 2013年くらいに仕事と並行して大学院に通っていた。そこで、自動車産業論の講座を取って、日本の自動車メーカーが世界を制覇した理由を、教授とマンツーマンで話しながら調査していった。アメリカはNUMMIという合弁工場を立ち上げて、世界一のトヨタに必死にキャッチアップしているように見えていた。

それが今や、NUUMI は電気自動車専用メーカーのテスラの手に渡ったらしい。

初代モデルSは外観スタイルが自分好み。しかし、注目すべきは、以前から自分が記事に書いてきた V2H(EVに貯めた電気を家庭に給電して利用するシステム)を、すでにテスラが推進していることだろう。

 テスラが運営する NUUMI を取材した東洋経済の記事では、この2か所を確認しておきたい。

一般的にガソリン自動車に比べ、EVは部品点数の少なく、その分製造工程も少ない。実際、エンジンが1000点以上の部品から成るとされる一方、「テスラでは(モーターを含む)パワートレインの部分は17個の部品しかない」(テスラ担当者)と、差は歴然としている。

(…)

生産技術自体が、既存の自動車メーカーにとって高いハードルでないとしても、設備や従業員など抱えているものが多い従来の自動車メーカーほど「(設備や従業員の削減につながる)EV生産には踏み出しにくいのでは」(テスラ関係者)との声も聞こえる。 

 泉田良輔の著作から学んだのは、バリューチェーンの伸縮とCCCの伸縮が企業の生存競争にとって、大事なファクターになっていることだった。

バリューチェーンとは、上に書いた経営戦略論史のうち、『競争の戦略』のポーターが提唱した概念。原材料が製品になるまでに、付加価値をつけられていく多段階連鎖のことをいう。東洋経済記事からの引用の前半部分では、ガソリン車よりも電気自動車の方が数十倍分バリューチェーンが短いことを示している。

ICTの進化によってバリューチェーンが短くなればなるほど、新規参入の障壁が下がり、過当競争となるので、イノベーター企業は市場を移動し、あるいは市場を移動させて、「下層採鉱」へと邁進することになる。

東洋経済記事からの引用の後半部分は、長いバリューチェーンを抱えた既存企業が、市場を移動する・させる動機づけが乏しくなってしまうことを示唆している。実際、泉田良輔も、トヨタハイブリッド車展開には、同じような懐疑論を持っている。

つまり、既存の長いバリューチェーンを抱えた組織は、ともすれば「次世代戦略」が長いバリューチェーン(この場合では無数の下請け部品会社)の維持を自己目的化した革新性の乏しいものになりがちなのである。未読ではあるが、日本の電機産業がブラウン管テレビから液晶テレビへ移行する際の「バリューチェーン伸縮のまずさ」を、泉田良輔は最初の著書で確認したのにちがいない。 

日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか

日本の電機産業 何が勝敗を分けるのか

 

さらに『Google vs トヨタ』で示唆的だったのは、トヨタの世界覇権は「長いバリューチェーンを手動で最適化して廻す能力」にあったのではないかと示唆している点だ。トヨタ流モノづくりの代名詞となっている「カンバン方式」や「ジャストインシステム」は、確かに「ロング・バリューチェーン最適手動回転」を意味している概念だ。「ロング・バリューチェーン適応」がトヨタコア・コンピタンスであるなら、「日本のモノづくり」代表企業だとの国民的誇りとは裏腹に、トヨタの今後の見通しは思ったより暗いかもしれない。

ICTの加速度的な発達は、バリューチェーンを短くするだけでなく、CCC(仕入れから現金化まで循環する日数)も短くする。CCCの短期化は、企業の新規市場開拓を推進するキャッシュとなる。株式だけでなく、このCCC短期化を活用した「下層採鉱(新たなロング・バリューチェーンを獲得可能)」が、イノベーションの原動力となっているようだ。結論の一部として書けるのは、しばしば言及されるように「バリューチェーンの設計こそが企業活動である」なら、イノベーションとは、企業体の重心そのものを移動し、それによって市場を移動させるのをかのうにすることだ、とも言えるかもしれない。

 ここまでで自分の頭の中は整理できた。しかし、今後10~20年で仕事が半減するとも言われる産業構造の急激な変化のうち、どこから「ポジ出汁」をとっていいのか、一向にわからないのだ。

企業体の重心=中心が変わるということは、セントラルの遷都… と言葉がつながったあと、わずか5年の間に4回も遷都した聖武天皇のことが頭に浮かんだ。どないなっとんじゃい、聖武な話。

平城京恭仁京難波宮紫香楽宮平城京

 このフローチャ―トをじっくり見ているうちに、ビジョナリー泉田にも見えていないかもしれない「ポジ出汁」の「だしの素」が、ちらっと見えたような気がしたのである。

 平城京恭仁京難波宮紫香楽宮平城京→(1300年間くらい)→ポスト京

 「2位では駄目なんですか?」「ネットワーク効果があるので1位でないと駄目です」

と誰かとやりとりした上で、スーパーコンピュータ「京」の後進の開発計画を追ってみよう。現在の日本で唯一その未来にワクワクできる分野かもしれない。 

記事はまず、日本が2018年4月を目標に、人工知能処理向け大規模・省電力クラウド基盤(ABCI)を完成させようとしていて、完成すれば現時点で世界最速のスパコンである中国の神威・太湖之光を超える演算速度を持つことになると警戒感を示した。

 続けて、専門家の見解として、現在のスパコンは個人向けのコンピューターの100万倍ほどの性能を持ちで、一般のコンピューターが3000年掛かって計算することを、スパコンならば1日あれば計算できるとし、ABCIは車の自動運転技術、ロボット、医療診断技術に応用でき、こうした分野の発展を加速させることができる見通しだと伝えた

(強調は引用者による)

 続いて2014年3月28日、国の独立行政法人である理化学研究所は4月1日付で、「エクサスケールコンピューティング開発プロジェクト」を発足させて、ポスト「京」となるエクサスケールのスーパーコンピュータと、その性能を引きだすアプリケーションの開発に着手することを正式に発表した。京速計算機「京」のときの開発費を3割ほど超える、総事業費1400億円で開発を行い、2018年度から生産と設置を開始して、2020年度からの運用を開始する予定とされる。ここに、我が国の次世代スーパーコンピュータ開発が、声高らかに始動したのである。

(強調は引用者による)  

エクサスケールの衝撃

エクサスケールの衝撃

 

引用部分と、上記の日経BPの「遅延」記事を総合すると、本格運用は今から5年後の2022年頃になりそうだ。わずか5年後だ。その5年後から始まる「ポスト京」の稼働予定ぶりがぶっ飛びの凄さだ。

健康長寿社会の実現

1. 生体分子システムの機能制御による革新的創薬基盤の構築(約80日)

2. 個別化・予防医療を支援する統合計算生命科学(約80日)

防災・環境間題

3. 地震津波による複合災害の統合的予測システムの構築(約70日)

4. 観測ビッグデータを活用した気象と地球環境の予測の高度化(約100日)

エネルギー間題

5. エネルギーの高効率な創出、変換・貯蔵、利用の新規基盤技術の開発(約80日)

6. 革新的クリーンエネルギーシステムの実用化(約10日)

産業競争力の強化

7. 次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成(約80日)

8. 近未来型ものづくりを先導する革新的設計・製造プロセスの開発(約65日)

基礎科学の発展

9. 宇宙の基本法則と進化の解明(約100日)

将来性を考慮し、今後、実現化を検討する課題(萌芽的課題)

10. 基礎科学のフロンティア――極限への挑戦(約70日)

11. 複数の社会経済現象の相互作用のモデル構築とその応用研究(約10日)

(新)12. 太陽系外惑星(第二の地球)の誕生と太陽系内惑星環境変動の解明

(新)13. 思考を実現する神経回路機構の解明と人工知能への応用(約80日)

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shinkou/035/gaiyou/__icsFiles/afieldfile/2014/09/16/1351943_01_1.pdf

 (全文は上記のPDFで読める) 

 それぞれが大きな成果を創出したとしたら、日本は、先進国の中でも頭が1つ以上抜きんでた、大きな国力を持つようになることは間違いないであろ う。それこそが、すべての先進国が総力を挙げて、その未来を賭して次世代スパコンを開発する理由に他ならない。

 それはすなわち、近未来の先進国の国力が、次世代スーパーコンピュータによって決まってしまうと言っても過言ではないのである。 

上記の2冊の著者である齊藤元章は、エクサスケール(京の100倍)のスーパーコンピュータの出現が、人類の歴史を飛躍的に塗り替える「前特異点(プレ・シンギュラリティ)」を形作ると主張する。そして、前特異点到達後、人類はフリーエネルギーを開発し、エネルギー問題と食糧問題と医療問題を解決してしまい、人類はほぼ「不労」かつ「不老」の人生を手に入れると続ける。

あイタたたた… 頭が痛くなってきた。そんな世迷言を口にするのは、どこかのSF狂かオカルト狂に決まっているだろ。どこの馬の骨が書いたんじゃい、聖武な話。 

 しかし、どんな無理解に満ちた批判をぶつけられても、齊藤元章は自身の主張のセントラルを遷都しようとはしないだろう。何しろ、齊藤元章自身が、最先端のプロセッサ開発に当たっている最大効率型少数精鋭部隊10人の一人なのである。信じるべき話を信じられない原因は、私たちの固定観念の方にある。

この記事の冒頭、スティーヴィー・ワンダーの隣で、自身の発明したシンセサイザーの手ほどきをしていた発明家が、今や世界をリードする「未来学者」になっていることにお気づきだろうか。

この最新の有望分野を理解するには、未来学者レイ・カーツワイルの壮大な未来予測を、或る程度は真に受けておいた方が良いだろう。眉に唾をつけたままでもいいので、いくつかの記事を虚心に読んでほしい。  

 しかし、情報テクノロジーは線形的な発達ではなく、指数関数的な発達をします。 
 たとえば、「ヒトの遺伝子の塩基配列をすべて解析する」というヒトゲノム計画。このプロジェクトは、1%の解析が終わるまでに7年を要しました。多くの科学者や批評家たちは、「1%の解析に7年かかったのだから、すべてを解析するにはその100倍、700年かかる」と予測した。線形思考ですね。
 しかし、私は、「1%終わったのなら、もうほとんど終わりに近づいている」と考えました。この分野の研究は、毎年倍々で結果が伸びていくから、次の年には2%、その次の年には4%、その次の年には8%……つまりあと7年で解析は終わりだ、と。実際そのようになりました。 

 シンギュラリティを提唱したレイ・カーツワイルは、人類は6段階の進化を遂げると言っています。今はまだ4段階目で、シンギュラリティによって5段階目に到達するそうです。5段階目は何かというとロボットと人間が相互に高め合う時代。ただ、そこまでは理解できるんですけども、6段階目は宇宙と調和すると予言しています(笑)。
 こんな話をすると頭がおかしいと思われるかもしれませんが、まずはシンギュラリティを超えるところからですね。6段階目に行くにはロボットと人間が高め合わないといけない。その先に行くには人間だけでは到達できず、ロボットの力が必要となるので、まずは5段階目に行けるように、今がんばると。それがわれわれの置かれている立場ですね。

上のインタビューで言われている「宇宙と調和する」という表現は、正確には「宇宙が覚醒する」である。完全にスピリチュアリズムの範疇にある表現なので、信じられない人がたくさんいることも理解できる。

話を小さくしよう。というわけで、各国が未来の国力を賭けて開発競争に勤しんでいるということは、都市計画にまで「下方採鉱」したサービス・プラットホームの中核を、クラウド型の「ポスト京」が担う可能性が高いだろう。

日本の命運を背負う精鋭部隊のひとり齊藤元章は、日本のスーパーコンピュータが絶対性能で多少遅れをとったとしても、アルゴリズムや解析性能やソフトウェアの実装の容易さなどの総合力で見れば、依然として世界一位であることを示唆している。

日本の都市の自動運転車たちを自動制御するのは、ポスト京かポストポスト京になる公算が高そうだ。そのサービスプラットホームに連なるバリューチェーンの長さは、有難いことに、日本の労働需要や製造業を大きく押し上げることだろう。

 

 

今晩はしっかり「ポジ出汁」が取れたので、執筆後の夜食の蕎麦が美味しくなりそうだ。

このブログでは、さまざまなフランス人系の固有名詞に言及してきた。ジャン⁼ピエール・リシャール、ガストン・バシュラールルネ・シャール… 暫定的結論としてここに書きつけなければならないのは、この固有名詞のようだ。「バシャール de ござーる」。 

少しばかり余談を付け加えておきたい。

特異点到達後、人類はフリーエネルギーを開発し、エネルギー問題と食糧問題と医療問題を解決してしまい、人類はほぼ「不労」かつ「不老」の人生を手に入れると続ける。

日本を代表する研究者の齊藤元章による「常識外れ」のこの発言を読んだとき、自分は少しも驚かなかった。驚かなかったどころか「待っていました」と心の中で呟いたのだった。量子コンピュータにしろ、フリーエネルギーにしろ、それは10年以上前からバシャールが常々言っていたことと、まったく同じだったからである。

となると、人生をワクワクしながらポジティブに生きている人は、同じ周波数の人々が乗る専用列車に乗り込んで、2012年以降だんだん乗り換えができなくなる、という「バシャール流ポジティブ度選別型運命論」も、案外的中しているのかもしれない。 

バシャール スドウゲンキ

バシャール スドウゲンキ

 

 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』を読んだあと、「フォースとともに歩みなさい」という台詞が心に刻まれた。自分にとって、遷都することなくセントラルに据えるべきフォースとはどんなものなのだろうか。フォースを存在全体へ行き渡らせ、しかもポジ出汁を利かせて、純度の高い十割蕎麦な魂で生きていくことはできるだろうか。

ここ数か月、「聖なるフォース」に属する存在からのポジティブネスが、自分の人生観を明るい方向へ軌道修正してくれたような気がしている。長距離ランナーが休憩所でミネラル・ウォーターを飲み干すように、十割のフォースそのものとならんとしている魂と身体に、ワクワク型ポジティブネスを漲らせて、また次の休憩所まで走ろう。そう思う。

行き先は?

蕎麦へ

 

 

 

(原曲は Stevie Wonder。カバーは MAYA)